第54話
「・・・でさー。」
「マジでぇ?」
校舎側から歩いてくる女の子たちに気付いて漸く、私の意識は急浮上した。
それでも向けている視線の先には、彼女と楽しそうになにか話している蓮池君。
「っっ、」
女の子たちが私とすれ違った途端、何かスイッチが入ったように足が動いた。
早く。早く。・・・早く!
なぜか私は、早く蓮池君に挨拶しなくちゃ、と思った。
私の存在を、忘れられないように。
今日も口角を上げて、返事を返してくれる。
そう思った。
だけど・・・
息をきらした私が靴箱に着いた時、周りを見渡してみても、靴箱の入り口には蓮池君と彼女の姿が見えない。
きっと学年が違うから、今別々に靴を履き替えてるんだろう。
チャンスだと思った。
2年の靴箱の所まで早足で歩いて行って、角を曲がろうとする。
その時、私の耳にはとても鮮明に、その言葉が聞こえたんだ。
「彼女だけど。」
「っっ、」
足が、動かない。
微動だにしない自分の足。
それだけじゃない。身体全体が、動かなかった。
そんな私に追い打ちをかけるように、彼女の可愛い、ソプラノの声が響く。
「郁?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます