第52話

来る時間も遅刻寸前。


きっと休みボケってやつなんだと思う。


そんな可愛い一面も持っている彼は、この学校一の人気者。




親友の福田君も人気が凄いから、よく休み時間に廊下の前を通る女の子が多い。



あからさまに見物に来る人はあまりいないけど、みんな移動教室とか休み時間で偶然を装って彼を見たいんだ。



そんな彼女たちに私たち同じクラスの女子たちは、優越感を感じる。


授業中、体育、何より話せる環境にあることが奇跡みたいに感じる。


しかも2年生で選択が一緒になれば3年間変わらず、だから。



その中でも。


普段あまり笑顔を見せない彼が、私にだけ笑顔を見せる瞬間がある。


それだけで、心臓が張り裂けそうな程、歓喜に踊る。




「蓮池君、脈ありだよね、絶対!」


「え、そ、そうかなぁ?」


「そうですよ絶対!にこ先輩にだけ、向ける笑顔の種類が違いますもんね!」



女バスのメンバーとの間でよくこんなことを言われる。


正直、私も。


自分が彼の特別になれるんじゃないかって、期待はしてた。



蓮池君は、クラスの女子とも普通に話すけど、それ以上に私が笑えば、笑顔を返してくれるから。




なのに……





どうして?

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