第49話

「中1から。」


「・・・。」




何も言えない。・・・何も、言えねえ。



「お前の中学、給食無いんだな。」


「そうだね。」



茫然とする俺を気にもしていない郁は、弁当を丁寧にしまいながら小さく笑った。



「一所懸命だったよ。」



その言葉に、郁の顔が綻ぶ。


それは、こいつらの歴史。



「小6だったのにさ、作るって聞かなくて。初めは焦げ焦げだった。」


「へぇ。」



のろけ半端ねえ。


興味無さげにいつもの郁の真似をしてみるも、どうしても俺の耳は釘付けだ。


この落ち着きの違いか?モテの違いは。



「学校がある日は必ず、早く起きて弁当を作ってくれた。」



凄いの一言だった。


俺のババアに爪の垢をくれないだろうか?




「今はこんな、生意気なことができるようになったからね。」


「いんげんの肉巻きっつうしょうも無いことをそう呼ぶんならそうなんだろうな。」



スマホを愛おしそうに見た郁。


それを冷たい目で見ていた俺は、漸く合点がいった。



「始業式、いろはちゃんとメールしてた?」


「名前。」


「長谷川さ~ん。」




普通にしつこくね?


とりあえず睨みが怖すぎるので誤魔かしてみる。



「ごめんなさい。」



全然許してくれてないけど。

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