第47話
ジッと見ていると、何かを送ったらしい郁はインゲンの肉巻きをただ見つめている。
すぐに震えたスマホ。
どうやら相手からの返信のようだ。
その内容が気にくわなかったのか、少しだけ眉間に皺を寄せた郁は、小さく舌打ちをしてインゲンの肉巻きを一口食べた。
「なに?嫌いなん?」
俺が聞けば、郁は小さく首を縦に振る。
「インゲンの歯ごたえが不快。」
どうやらインゲンを食べた時のキュッキュ鳴るあれが嫌らしい。
弁当を見れば、今郁が食べているのと合わせてインゲンの肉巻きは2個入っている。
「食べてあげよう!」
親切という名の食欲で、俺の手が素早く動く。
その瞬間、感じたのは、
激痛。
「イタッ!!」
迫った俺の手には、郁の箸が刺さっていた。
文字通り、刺さっている。
もう一度言おう。月野高校野球部エースの俺の大事なこの手に、”箸が刺さっている”
「何すんだ!」
涙目の俺は可哀想な自分の手を見る。
窪み……窪みが……
ズキズキと痛む箸が残していった窪みと無表情の郁を交互に睨んだ。
そんな俺に郁は小さく舌打ちを吐き出す。
とりあえず、謝れ。
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