第46話

「いろ……長谷川さんどころか、可愛い女の子の声くらいしか拾えなくてさぁ……」



脱力した俺は、クリームパンを一口かじって机に突っ伏した。


俺の言葉に郁の返答は勿論無い。


聞いているかも不明。


言葉のキャッチボールという言葉を教えてやりたい。



「どうすんの?あ、可愛い声だなぁ、と思った子がその辺の眼鏡男とかだったら。田中の馬鹿のせいで女の子どころじゃなかった。」


「ふーん。」


どうでも良さそうな声に顔を上げると、郁の視線はひたすら弁当へと向かっている。



そこへピクリ、眉が動いて。



静止した箸の先を見ればインゲンの肉巻きが。


こいつの弁当、いつも美味そうなんだよな。


料理上手、というより、毎日キチンと弁当を作ってくれる母ちゃんがいて羨ましい。



・・・・ババア。弁当くらい作れよな。



イラついた俺は、残りのクリームパンを頬張る。


纏わり付く安もんのクリームは、俺に不快感を与える。



クリームパンは……面倒くさがらずに駅前のパン屋で買うべきだった。



コンビニで買った自分を殴りはしないけど、『コラッ』くらいは言っとこう。



俺のクリームパンについての熱い思いを余所に、郁は突然、スマホを取り出して何かを打ち出した。

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