第44話

なんでだろう。靴箱で道を塞いでいたあの子たちには確かに嫉妬をしたのに。


亜里沙のような子たちには1ミリも心動かされない。




『私の方が勝ってる』



そう考えているかのような勝ち誇ったこの表情を、ただ滑稽なものとしてしか見れない、私の歪んだ心のせいだろうか。




とにかく、この子とはどうやら仲良くなれそうにない。



何かを話している亜里沙を視界から外した私は、立ち止まって空を見上げた。



私が今いる場所は、校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下。



青い空は春の風を運んできて、私の頬を撫でていく。



この空の下、郁がいる。


きっと郁も、この空を見ている。



目を閉じれば、風のせいで空へと舞いあがった桜の花びらが郁の教室へと飛んで行って、空へ向かって微笑んでいる郁の頬を滑ったのが見えた。



もう、会いたい。



・・・会いたい。



そう思った途端胸が軋んで。そのせいで寄った眉根のせいで、自然と瞼が上がった。



「いろは~?」



どういう神経をしているのか、亜里沙が私を名前で呼ぶ。



小さくため息を吐いて、踵を返した。

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