第43話

先生の説明を受けながら、廊下をただ歩いた。


その間、先生の説明以上に自分の説明をしてくる亜里沙にただ頷く。



それで分かったのは、この学校が思ったより広い事と、女子バスケと野球部が特別待遇だと言われても仕方のないほどの設備を備えているということのみ。



渡辺亜里沙の情報は対して耳には入らない。



だって。



「お兄ちゃんがいるんだけどね?あ、そういえば、蓮池先輩には兄妹はいるの?」



ほら。



この子はよくいるパターンだ。


私をただの幼馴染だと無理矢理思って、私と友達になることであわよくば郁を……


中学校の時も、小学校の時だって。


私という存在はこういう子たちに利用されてきた。



だからといって私は、この子たちから距離は置かない。



「さぁ。」



それだけを言っておけば、彼女たちは私から得られる情報は少ないと判断して勝手に距離を置いてくれる。



「へー、いろはって結構何も知らないんだね?」


「・・・。」



どうやらこの亜里沙は、一筋縄ではいかないらしい。



「隣町から受験したの。蓮池先輩をゲットするためにね?絶対に。」



最後は低くなった彼女の声音には、挑戦的な嘲笑も含んでいた。

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