第39話

side いろは




「長谷川いろはです。よろしくお願いします。」



それだけを言って座れば、まばらではなく、かといって決して盛大じゃない拍手が巻き起こる。




高校生にもなってなんで自己紹介をしなくちゃいけないのか。



このクラス中の生徒が思ってることだよね。



この高校は、クラス替えがないから、この人たちは3年間、一緒に過ごすクラスメイトになる。


だからの自己紹介なのかもしれないけど、もう16歳の私たちは少しだけ、大人の気分で。



こういう”子供っぽい”ことは苦手だったりする。



次の人が立って挨拶をしだしても、何故か私に集まる視線。



郁と別れてから先生が来るまでの間から変わらず向けられている視線が不快で、眉を顰めた。



特に女子からの視線は鋭くて。



入試の時に聞いた”噂”は本当だったのだと悟る。




今年、この学校の入試の倍率が高かったのは、私の彼氏の郁が関係している。



1年生にして強豪月野高校野球部エースを勝ち取った、福田伊吹。


一体を占める暴走族【焔】の総長、阿部柊羽。


そして学校一の人気を誇る、蓮池郁。



この3人の人気は、他校にまで及んでいて、ファンクラブも多数あると聞く。


そんな3人と同時期に同じ学校で過ごせる。


それだけで、この学校を受験する人間が大増加した。

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