第37話
「いろはが、か弱い、ね。」
「っっ、ちっせーわけじゃないのにな。なんつーか、”天使”って感じだよな?」
心配してるくせに、見なかったことにしてくれたらしい伊吹が吐いたそのありがちな表現に、思わず口角が上がる。
このままいけば、いろははイメージだけで職業を天使にさせられそうだった。
「結構、ほど遠いよ?」
「え!?そうなん!?」
僕の言葉に伊吹が目を見開くから、同意の意味で頷いておいた。
僕のいろはのイメージは、天使からはほど遠い。
いろはは僕を誘惑する色魔。
いろはは僕を呑みこむ闇。
いろはは……僕を離さない、悪魔。
いろはの存在は、僕の中の醜い部分を刺激し、引き出す。
嫉妬、独占欲、執着、支配欲……
あらゆる負の感情は、いろはによってだけ、引き出される。
だけどそんないろはは、僕を奮起させ、感謝させてくれ、そして愛を感じさせてくれる。
対極の感情のどちらも経験させてくれる、稀有な存在なんだ。
だから僕は、僕だけを愛してくれる人を、長い年月をかけて造りだしたんだ。
これほど醜い行為は無い。
その人間の人生から、あらゆる愛を削除し、絶望させ、僕だけに依存させたんだから。
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