第35話
揉めること数分、やっと伊吹が折れてため息をついた時、漸く隣の席が埋まっていることに気が付いた。
松本にこは普段、笑顔が絶えない元気な女だという印象がある。
笑った時の頬の辺りがいろはに似ているから、よく思い出し笑いをしてしまうから。
『子供みたいで嫌!』だと言いながら口を尖らせた時のいろはのほっぺみたいだ。
そんな彼女は今日、なぜか目が泣きはらしたように腫れていて、充血も半端ない。
凄く切なそうに、悲しそうにこっちを見ていて、普段の笑顔どころか挨拶もしない。
どうやら、何か悲しいことがあったらしい。
ただこちらをジッと見てくる彼女からすぐに興味を無くして伊吹に視線を向ければ、そんな彼女を切なそうに見ていた。
胸なんかで女を選んでないで、松本に告ればいいのにな。
こいつが松本を好きなことは一目瞭然だった。
「僕のファンがどうとかは知らないけどさ、いろはが虐められるってのは、気になるな。」
「っっ、だろ?」
僕の言葉にハッと我に返った伊吹は、無理矢理のように松本から視線を外した。
いろはがもし、虐められるとしたら僕は……
「壊れてしまうかも、しれない。」
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