第34話

反省。



素早く指を払いのける。



「で?なんでやり過ぎなの?」


「自己完結具合がすげーな……。」



まだ傷心中らしい伊吹は、寂しそうに笑う。


もう反省をしていた僕はそれに同情したりはしないけど。



そのまま何も言わずに見つめていると、どうやらもう自分を取り繕うのは無駄だと判断したらしい。


これを立ち直りと言うのかは分からないけど、立ち直りが早い。



・・・伊吹のイイところだと思う。



「お前のファンは、すげー数いるんだぞ。あんな派手なことしたら、いろはちゃんが虐められんぞ。」


「・・・。」



言いたいことは、分かった。



だけどまず第一に、


「いろはを名前で呼ぶ時は、人生終わる覚悟しとけよ?」


「こわっ、」


これだけは、許せない。



立ち上がった僕が胸ぐらを掴むと、教室の喧騒が一気に静まった気がした。



それには気付いていたけど、それをどうこうする気はない。



青い顔をしながらもふざけてる伊吹に顔を近付けた。



「次に呼んだら、お前とは終わりだからな。」


「っっ、どう呼べばいいのよ。俺もこれから知り合いになる子だろ?」



なんとか僕の手を外した伊吹は、呆れたようにそう言った。



だから、


「長谷川さんで良いだろ。」


「・・・そこは普通だね。」


良い提案をしたのに、額を手で覆ってやれやれと首を振る伊吹に殺意が沸いた。

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