第32話
そんな中で、クラスの女がいつものように話しかけてきた。
「あのっ、蓮池くん?えと、」
何か言いたそうな女に「はよ。」とだけ言っておく。
正直言っていろはの存在を言いふらす気はない。
僕は今日、待ちに待った彼女との登校を実現しただけなんだから。
まだ何か言いたそうな女に気付かないふりをして、教室のドアを開けた。
途端。
「い~く~!!」
デジャヴュを、感じた。
迫りくる坊主頭を目を細めて見つめていると、伊吹は僕の胸倉を勢いよく掴んだ。
「おはよ。」
「おはようじゃねえ!」
流石野球部。朝からスゲー元気。
だからってあまり頭を振り回されると、気分が悪くなる。
「やめろ。」
やんわりと拘束を外した僕は、自分の席に腰を下ろす。
窓の外の景色は、いろはのいない1年間とはうって変わって、輝いて見えるんだから不思議だ。
いや、僕が現金なのかも。
「あれはやりすぎだろ。」
そんな僕に、伊吹の真剣な声が落ちる。
視線を上げれば、険しい表情の伊吹が僕を見下ろしていた。
「なにが?」
首を傾げる僕に、伊吹はため息を吐いて前の自分の席に腰を下ろした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます