第31話
僕のいろはを見る男たちの目は、不快でしかない。
なぜ僕は、いろはより早く生まれてしまったんだろう。
教室どころか、学年まで違えば、守れる時に守れない。
明らかにいろはへ不純な視線を向けている男どもの中に、こいつを残していかなきゃいけないんだ。
「いろは、分かってると思うけど……、」
「うん。気を付ける。じゃね。」
僕の心配をよそに、全然気にしていない様子のいろはは、僕の上着を少しだけ引いて、踵を返した。
一度だけ振り返って、笑顔で手を振る。
手を振りかえした僕に軽く頷くと、机に貼ってある名前を確認しだしてしまった。
ボーっとその光景を見ていたけど、ハッと我に返る。
主導権を握っているのは僕だけど、振り回されてるのも、僕なんだ。
小さくため息を吐いて、階段へ向かった。
そんな僕の背中を、いろはが教室のドアから顔を出して愛おしそうに見ていたことに気付かないで。
廊下を進む度、僕に集まる視線が増えている気がする。
集中的にそれは僕の寂しくなった胸元へ。
そりゃ、そうだろうけどさ。
なんとなく、照れくさい。
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