第30話

「放課後ね?」



さっきの女たちを残し、1年の教室まで送ってきてそう言えば、いろはは首を傾げた。



「今日は多分、1年生だけ早いよ?」


「・・・そっか、そうだった。」



1年生は今日、オリエンテーション的なものだけで終了だった。


授業は明日から。


いろはに見せてもらったプリントに書いてあった。



苦笑いの僕に、いろはが吹き出す。



「もう、郁ってば。私よりふわふわしてるね。どうしたの?」



その質問には、恥ずかしくて答えることはできない。



今日を待ち望んでた僕は、何も手に付かなかったくらい浮かれてるから。



それをいろはに知られるのは、僕の威厳にかかわる気がする。



「じゃあ、僕の部屋に来る?」



そう耳元で囁けば、いろはの耳が真っ赤に染まる。



主導権は、僕だ。それだけは譲れないから。



だけどそんな動作だけで、いろはの教室が沸いた。



今日はどこへ行ってもなぜか注目されてしまう。


1年生は僕のことなんて知らないだろうに。


入学したてでネクタイをしてるいろはが珍しいのか?



思わず眉間に皺を寄せた。



視線の種類の一つを感じとってしまったから。



一番のイラつきの要因は、男の目だ。

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