郁の彼女

第29話

side 郁




いろはの黒い感情は心地いい。



妬いてほしいという願望は、男なら一度は思うことだ。


もっと、嫉妬して欲しい。いつもは僕が嫉妬しっぱなしなんだから。



いろはは”モテる”



小学校の時はそうでもなかったけど、中学になって、恋愛に目覚めだすと、いろはを呼び出す奴は飛躍的に多くなった。



だけどいろはは、呼び出しには応じない。


靴箱に入っている手紙はゴミ箱に捨てるし、携帯番号を忍ばされても、その場で破り捨てる。



教室で公開告白をする勇気ある奴らもいたけど、


「ムリ。」


笑顔でそう切り捨てる。



この徹底された対応は、僕という存在がいることも影響してるだろうが、いろはそのものの性格も影響している。



ほんと、良い性格してるんだ。




純粋無垢だったいろはは、ある出来事と、”良い”父親のお陰で、壊れた。



異性に対して、恋愛に対して、【夢】を見なくなったんだ。



そんないろはを、僕という存在に目覚めさせるのは、根気がいった。



子供の頃から少しずつ、いろはに刷り込んできた、感情。



やっと理想の女に成長したこいつは……



僕だけのものだ。

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