第26話

寂しさを抱えたまま上靴に履き替えていると……



「あ、の、蓮池くん?」



背後からいろはじゃない女の声が聞こえた。


振り返れば、なんとなく、見たことがあるような女が友達と3人で立っていて。



「なに?」


「っっ、」



首を傾げただけなのになぜか、怯えている。


一瞬、小さく息を呑んだ女は、後ろの友達らしき女たちに急かされて口を開いた。



「あの、さっきの子……誰?」



その質問に、眉を顰めたのは当たり前だ。


当然の疑問かもしれないけど、なんとなく、嫌な聞き方だから。



ネクタイの着いていない僕の胸元をしっかり捉えたままの彼女たちの視線を見れば何が聞きたいのか一目瞭然だし。



確信、してるでしょ?



「僕の彼女だけど。」


「えっ、嘘っ、」



口を手で覆った女たちに、顔をしかめた。


なんで他人にわざわざ嘘つかなくちゃいけないわけ?



すると僕の顔を見上げた女たちは一瞬グッとなにかを呑みこんで、不機嫌そうな表情を見せた。



何も言わない女たちが僕の前を三列で塞いでいるから、当たり前だけど通れない。


もう履き替えているのに。早くいろはに会いたいのに。



先に進むため、口を開こうとした時だった。




「・・・・郁?」

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