第25話

なんとなく、立ち止まって。



校門から学校を一目見た。


僕の横のいろはもそうしていて。


僕たちの呼吸は、同じだ。



2人で笑い合って一歩踏み出せば、不快な視線に晒された。



内心イラついているけど。


僕の隣を歩くいろはが、まっすぐに前へと笑顔を向けているから。



僕がここで、それを乱すわけにはいかない。



「いろは、教室はどこ?」


「ん?分からない。外の掲示板に張られるみたいだよ?」



言われてみれば、そうだった気もする。



靴箱の前にある、掲示板。去年はそれにクラス割りが書いてあった気がしたような……



小さく首を傾げた僕に、いろはがクスリと笑みを零した。



「郁ってば。先輩でしょ?しっかりしてね?」


「ふっ、はい、後輩ちゃん。」



思わず2人、噴き出して。いろはの笑顔を見ていると不快な視線も気にならなくなってきた。



「1年はここだから。」


「うん。後でね?」



1年と2年の靴箱は隣同士で、3年だけ少し離れた所にある。


上靴を履けばすぐに会えるし、大声を出せば会話だってできる。


だけど離れた指先が、なんだか寂しいのはなぜだろう。



去年は違う学校同士でもなんとかやれたのに。近付くと贅沢になってしまうらしい自分に苦笑いが出た。

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