第21話

side 郁




「・・・おはよ。」



僕といろはの家は、公園を挟んで向かい同士だ。



小さな公園なのに、真ん中に噴水があって、遊具はブランコと鉄棒、そしてドーム型の石造りの遊具。



砂場は昔、不衛生だと苦情がでて撤去されたんだ。


そんな公園には、日よけ付きの机と椅子が一組だけある。


木の造りの日よけはいつも、季節になると藤の花が咲くんだけど、その季節以外は雨も日も避けきれてないって昔、いろはが笑っていた。



そこで僕たちはいつも、待ち合わせをする。


小学校5年間、中学2年間、一緒に通った。


そして今年は……



目の前にいるいろはは、当たり前だけど昨日と同じ格好だ。



だけど。


この公園で見るのはまた、違った意味を持つ。



僕が挨拶を返さないからか、眉尻を下げて見てくるいろは。



胸元には僕が強く言いきかせたからか、僕のネクタイが着けられている。



結構”気にする”いろはらしく、諦めきれないとばかりに自分のリボンは鞄で揺れていた。



「今日からまた、一緒だね。」



僕の言葉に、いろはは頬を緩める。



「うん。よろしくね?」


「ん。」



自然と差し出した僕の手に指を絡めるいろはは、1つ下だから……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る