第21話
side 郁
「・・・おはよ。」
僕といろはの家は、公園を挟んで向かい同士だ。
小さな公園なのに、真ん中に噴水があって、遊具はブランコと鉄棒、そしてドーム型の石造りの遊具。
砂場は昔、不衛生だと苦情がでて撤去されたんだ。
そんな公園には、日よけ付きの机と椅子が一組だけある。
木の造りの日よけはいつも、季節になると藤の花が咲くんだけど、その季節以外は雨も日も避けきれてないって昔、いろはが笑っていた。
そこで僕たちはいつも、待ち合わせをする。
小学校5年間、中学2年間、一緒に通った。
そして今年は……
目の前にいるいろはは、当たり前だけど昨日と同じ格好だ。
だけど。
この公園で見るのはまた、違った意味を持つ。
僕が挨拶を返さないからか、眉尻を下げて見てくるいろは。
胸元には僕が強く言いきかせたからか、僕のネクタイが着けられている。
結構”気にする”いろはらしく、諦めきれないとばかりに自分のリボンは鞄で揺れていた。
「今日からまた、一緒だね。」
僕の言葉に、いろはは頬を緩める。
「うん。よろしくね?」
「ん。」
自然と差し出した僕の手に指を絡めるいろはは、1つ下だから……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます