第19話

「どういうこと?」


「はぁ。」



今日何度目かも分からないこれ。


いい加減うんざりだった。



「ちょっと福田、あれどういうこと?」



あの後、熱烈な抱擁をよりにもよって校門でしやがった郁。


部活生しかいなかったとはいえ、目撃者がいないわけがない。



派手。派手だよ。



「福田!あれなに?」



自分が人気者って自覚があるんだろうか?



「あの、福田くん?」


「いい加減にしろよ!」



朝から何度も何度も。


俺が教室に着くまで何度も聞かれた。



朝練で疲れてる俺を攻撃するのは、郁のファンだけじゃない。とにかく知り合いという知り合いが俺に聞いてくる。



目の前で目を見開いているこの女の子みたいに、知らない奴も混じってるけど。


みんなの視線の先は、今まさに校門を潜ってこっちに歩いてきている2人だろう。



ごく普通の手を繋いだカップル。彼女の首には彼氏のネクタイ。


そして学校中の視線が向いているのはその彼氏の方だ。



郁くん?ちょっと色々と考えなさすぎじゃない?



「っっ、福田、くん、」



眉間に皺を寄せた俺が女の子へと視線を戻せば、何故かこの子は目いっぱいに涙を溜めている。

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