第16話

いろははそれに笑い返すと、まだぶつぶつ言っている伊吹を見つめた。


そこで。なにか合点がいったらしい。


口角を上げて僕にドヤ顔をしてみせる。



・・・かわい。




「坊主が嫌な、伊吹くん、でしょ?」


「ん。正解。」


「おい!どういう説明の仕方してんだ!」



思わず突っ込みを入れた伊吹が突然立ち上がるから、いろはがまた驚いて固まってしまった。



「いい加減、うるさい。」



いろはを引き寄せてそう唸れば、伊吹は罰が悪そうに苦笑いを零す。


「いろは、伊吹。伊吹は……知らなくていいよ。」


「なんでだよ!」



ありがちなツッコミの動作をした伊吹が激しい動きをしたせいか、ユニフォームの尻ポケットからスマホが落ちた。



「やべえ!」


結構な勢いで落ちたからきっと傷が付いてるな。


慌てる伊吹を冷たい目で見つめていた。



「ふふふっ、」



突然横で、いろはが笑い出して。


「郁の話の通りだね?」



楽しそうにそう言った。


その笑顔が、可愛くて。



抱きしめたい衝動に駆られる。



いろはを大事にしてきた。


この日を、指折り数えていたんだ。



僕たちはこれから、一つ一つ、学んでいく。



大人になるために。

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