第15話

「誰。」


「彼女。」


「お前の?」


「そう。僕の。」


「マジで?」


「マジで。」




「「・・・・。」」




「うっそだ~~!!!」


「・・・。」



突然頭を抱えて叫んだ伊吹に、彼女の肩が強張る。



少し、手を引いて。


こめかみを彼女の頭に摺り寄せた。



「あの、誰?」


首を傾げたこいつは、


「友達。」


「そうなんだ。」



僕の、彼女だ。




「ありえねえ。」



ぶつぶつうるさいハゲにこいつの薄茶色の綺麗な目が向いているのは気に入らないけど。


僕の友達だから、知っていて欲しいとは思う。



「いろは。」


「うん?」



激しく落ち込むハゲが珍しいのか、名前を呼んでも視線は奴のまま。


気に入らないから、手を強く握る。



僕に向けられた目。スッと通った鼻筋、そして、少しポテッとした唇は、僕の心臓を更に激しく高鳴らせた。



長谷川 いろは(はせがわ)



僕の、大切な彼女。



大切な、幼馴染。



大切な、家族だ。




いろはの眉のところで切り揃えられた前髪を、校門前の風が揺らした。



天然もののダークブラウンの髪は緩く巻かれていて、肩まで伸びている。


それを少しだけ指先で巻き取って、いろはに笑いかけた。

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