第12話

「お疲れっした~!」




いつもは暗くなるまでやらされる練習も、なぜか今日が入学式なだけで早く終わった。



帰ろうと外に出れば、入学式が終わったらしい新入生たちが親と帰っている姿がチラホラ見える。




「可愛い子いるかなー。」


「俺女は年下がいいんだよね。今年は励まねば。」


「なにそれ卑猥~。エッチ~。」



チームメイトたちのバカ会話を背後に聞きながら、そんな俺も可愛い子がいないかと目を凝らした。





そんな時。




一人、校舎からゆっくりと歩いてくる男。


そいつはいつものカバンを肩にかけて、ただまっすぐ、校門を目指していた。



「・・・郁?」



帰ったと、思ったのに。


いつものように歩いていた郁は、少しだけ視線を上げて。


何かを見つけると、歩を速めた。



郁の視線の先には、校門に立つ親子。



その子の顔は遠くて流石に分からないけど、真新しいうちの制服に身を包み、父親と2人、何か話しているのは分かった。



そんな彼女がふと、父親から視線を外す。



何かに気付いた彼女が、恥ずかしそうに少しだけ手を上げた時、近くまでたどり着いていた郁はゆっくりと、ポケットから手を出した。

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