第11話

才色兼備のにこも、百戦錬磨の井上も、郁の前では女の子なんだなー。



俺も一応、モテてるんだけど。



この学校一、二のモテ女を隣にはべらせてるこいつにはかなわない。



「ふ、」



俺の今の現状について考察していると、隣の郁から声が漏れた。



俺より少しちっせえ郁。身長くらいは勝っててよかったと思う。



視線の先には、スマホを見て微笑む郁がいて。


俺は目を疑った。



郁は結構笑うけど。こんなに愛おしそうに、穏やかに笑ったのは見たことがない。



後ろを振り返れば、井上はもう帰ってしまっていて、にこだけが見えた。


彼女もまた、スマホを見ながら笑っていて。



やっぱり、にこだな。




俺は確信に頬を緩めた。いつもダラダラしてる郁が、やっと本気になったんだ。





俺、にこのこと結構狙ってたんだけどな。





肩を落として、始業式の後、郁と別れてトレーニング室へと向かう。


入学式の今日は、校庭が使えないから、今日はひたすらトレーニングのみっつう地味に嫌なスケジュールだったからだ。



「心なしか、汗が目に染みるぜ。」




ベンチプレスが、いつもより勢いよく上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る