第9話
クッソ可愛いんだよね。
ギャルなのにつけまをしてないこいつは多分、自前で勝負できる容姿をしてる。
せっかく可愛いのに、コンクリート塗りたくる意味あんの?
「名前、呼ばないでよ。不愉快。」
「またまたぁ、嬉しいっしょ?お姫様に呼んでもらえてぇ?」
にこを押しのけて、眉間に皺を寄せた郁の腕に手を絡めるこいつは、井上 柚希(いのうえゆずき)姫なんて自分で言うなって思うんだけど……
「ゆず。てめえこんなん無理矢理連れて来といて堂々盛ってんじゃねえよ。」
生徒の波を割って入って来た軍団。
この辺一体を仕切る暴走族【焔】(ほむら)そのヘッドであるこの暴言野郎は、一応、井上の男だった。
「いいじゃん。郁上手そうなんだもん。」
この、発言さえなければ、この女可愛いのに。
「郁に会えたから柊羽(しゅう)、もう帰っていいよ?」
「チッ、お前マジでカスだな。」
阿部 柊羽(あべしゅう)は、焔のヘッドだ。こいつの場合は完全な金髪。それをツンツンに立てた髪がトレードマークで、いつも隣に女をはべらせている。
全然付き合ってるようには見えないけど、阿部と井上は一応”お付き合い”をしていて、井上は阿部のネクタイを締めていた。
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