第5話

郁の隣の席に腰を下ろしたにこ。


彼女が運で勝ち取ったその席は、にこにとって運命にも感じられた。



『やっぱあの2人、付き合ってんのかなぁ?』


『え~、にこだったら敵わないんだけどぉ。』



クラスメイトたちはそんなことを残念そうに囁き合う。


しかし、



『でもさ、あの女も狙ってるじゃん?』


『それにさ……、』




蓮池君、まだ”ネクタイ”してるし。



にこと同様、この学校の生徒たちが噂する女がいた。それはのちのち出てくることとなるのだが、その2人が獲得していないもの。




この学校は、カレカノになれば、生徒たちが必ずやっている儀式がある。



紺のブレザーに、灰色のスラックス、ごく平凡なこの学校の男子生徒の制服は、ネクタイ着用が義務化されている。



この学校の男女がカレカノになった時、同じくブレザーでリボン、青のチェック柄のスカートを着ている彼女はリボンの代わりに彼氏のネクタイを締める。



よくあるこの【儀式】

教師たちは校則違反だからと何度も注意をしたが、余りにも無くならないこの行為に、ついには黙認してしまった。




勿論それは、郁だけではなく、伊吹の首にもしっかりと絞められている。

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