第56話
いや逆に、完全に足を引っ張る。弱点だ弱点。
極端に言えば頼は”命を賭けて”黒蜜に恋している。
それを邪魔しようなら全力で排除するだろうし、黒蜜を傷付ければ制裁を与えるだろう。
黒蜜の使いようでそれは、白坂頼という人間すら壊してしまう可能性がある。
頼の重さは、厄介なんだ。
「どいてもらえますか?」
「……。」
道を譲るように頼の前から身体をずらした灰島は、頼を見て怯えていた。
まるでここで引かないと自分の全てが終わるかのように。
道行く生徒達は、頼の異様さに息を呑んで立ち止まり、背を向けている黒蜜だけが歩みを進めていた。
だけど、黒蜜は何かに呼ばれたように、ゆっくりと振り向く。
背後の空気の異様さに気付いたのか、眉を一瞬だけ顰めたけど。
「頼。」
ゆっくりと名前を紡ぎ、偉そうに顎で催促する。
その瞬間、今までこの場を支配していた絶対的な白坂頼は成りを潜め、頬を緩めた彼女は、小さく頷いて走り出す。
頼が黒蜜の隣に並んで笑顔を向けると、黒蜜も笑い返して2人は歩き出した。
それによってこの場の重い雰囲気はシャボン玉が弾けたように四散して、何かから開放された生徒達は一斉に安堵の息を吐いた。
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