第53話

side 頼



黒蜜君と友達になれましたが、目下の問題は全然解決されていませんでした。



「おはよう!」


「ん、おはよう。」



「ねぇねぇ、宿題やった?」


「そりゃあね。」



「……。」



いつもの校門の前、私は黒蜜君と灰島さんの会話を聞きながら、いつものように光里と緑谷君を背に歩いています。



「ねぇねぇ、昨日、黒蜜君の好きそうなCD見つけたんだ。もしよかったら、「頼。」」



友達になれたというのは、夢ではありませんよね?


「黒蜜君?」


「頼?」


ああ、私の都合のいい夢でしょうか。その人と関係のあったものを枕元に置けば、その人と夢で逢えると聞きましたのに。


「くろ……、」


「頼!」


”関連グッズ”など無いので、黒蜜君が授業で当てられて読んでいた教科書にしてみたのが功を奏したんでしょうか。きっと昨日のあれは素晴らしい夢だったのかもしれません。


いい夢でしたけれど、現実でないのは少々辛いものがあり……



しばらく、立ち直れそうにありません。



「より。」


「へ?」



顔をつねられ、激痛で”目が覚めました”



「はい、お帰り。」


「た、ただいま戻りました。」



私の頬をつねっているのは、黒蜜君の綺麗な指先でした。

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