第47話

話しかけてくるもんを無視するわけにもいかず、俺は愛想笑いを向け続けた。


灰島はなぜか俺の好みを知り尽くしていて、好きなバンドや、あまり映画を見ることのない俺が、唯一見ている映画の話、そして頼が聞くことがないだろう、勉強の分からない部分の話。


それらを毎日、俺の隣で”使う”



ここまで趣味や嗜好が分かられていると、逆に引いてしまうものだ。俺の好きな洋服のブランドまで知ってた時はゾッとしたな。



いつ飽きるんだと思って付き合っている間にも、俺の目は頼に釘付けだった。


灰島が次々と出す俺の情報に、目を白黒させ、放心状態。


だけどこっそりメモを取っていたのにはさすがに噴き出した。



ここまであからさまだと、灰島の”好意?”にはさすがに気付いているわけで。


ライバルがやすやすと知っている情報をご丁寧にメモするなよ、と呆れてしまう。



常に、放心状態、時折悲しそうに目を伏せるも、何度も這い上がろうと上げるその強い目。


何度も俺の中で確かな何かが沸きあがっていた。



そして今日。



ついに、限界が来たらしい。



また、公開告白をされるとは思わなかったけど、一心に俺に感情を向ける頼は、入学式のままだった。

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