第46話

そう思っていた。だから俺は、こいつを振り続けたんだ。


告白のたびに、断り続けた。



だけど、俺は流に言われて、気が付いたんだ。



『お前さ、振るのが辛いのは分かるけど、白坂を振る時のお前の表情、それ以上に見えるけど?』



結局俺は、この女に落されてるんだ、と。



入学式の壇上で、微笑んだ頼の笑顔に。俺は落ちていたんだと、自覚した。



だから俺は、校門から教室まで、一緒に歩くことに決めたんだ。仲を進展させようとか、そんなんじゃない。白坂頼が思った通りの嫌なお嬢様ならいいと、勝手に望んでいたからだ。



だけど俺が言わなくちゃなにも話せない頼は、恥ずかしそうに俺の隣を歩いていて。


可愛かった。



……質問の多さには引いたけど。俺なんかのスイッチでも押したっけ?


それでも俺に質問し続ける頼を見て回りが騒ぐのに、悪い気がしない俺。どうやら俺は性格が悪いみたいだ。



白坂頼が俺みたいな普通の奴しか見てない。その事実に顔を歪める”金持ち”たち。


優越感を感じた。



そんな時に現れたのが、灰島だった。



なぜか俺に挨拶をしてきて、ことあるごとに絡んできた。



『ねぇ、ここが分からないの。』


『ねぇねぇ、このグループ、知ってる?』


『ねぇねぇ……、』



ねぇねぇねぇねぇ、うるせえ奴だった。

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