第48話

何者にも穢されていない、キラキラした漆黒の目は、ひたむきに俺だけを見ていて、時折諦めるように伏せられる瞼すらも俺を誘惑する。



頼の心は確かに、俺を誘う。



その辺の奴らなんて目に入らないほど、溺れさせようと魅惑的に。



「よろしくね、頼。」


「っっ、は、い?」



鐘が鳴る1分前。それをスマホで確認した俺は、頼に笑いかけた。それに頬を染めた頼の手を引いて、もうほとんどの生徒が教室に入ってしまったあとの静かな廊下を進む。


「「……。」」



お互い、無言だけど。俺たちは確かに、繋がっていた。


”何か”はまだ、知らないフリをするけど。



ドアの閉まった教室の前、離した手が寂しかったのはきっと、お互いにだと確信がある。



寂しげに伏せられた頼の瞼に、触れたい。


でもそれは許されない。俺はまだ、頼を幸せにする自信がないから。


いやきっと今後もそれは、思い続けることだ。



その辺の女と軽く付き合いを始めるのとは違う。



やはり俺も、頼を”白坂頼”として見ている。



それでも俺は、落ちるわけにはいかない。


この”お嬢様の攻撃”に、陥落するわけにはいかない。

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