第44話

俺はそっと、白坂頼の背を壁に預けさせ、興味津々で見てくる生徒たちから隠すため、自分の体で隠した。



改めて彼女を見てみれば、やっぱり。



滅茶苦茶泣いてる。



「ッッ、ウッ、ヒゥ、ッッ、」


「……。」


号泣。


あの白坂頼が、鼻水垂らして、大号泣してた。



「グッ、ッッ、」


「……。」



俺、友達って言ったよな?



「はぁ、ううっ、」


「……。」


間違って付き合うとか言ってねえだろうな。



「んんんっ、……ッ、」


「……。」



心配になってきた。


なんとなく気まずくて、頬をかいてみる。その間にも、予鈴が鳴って。本礼が鳴るまでに、教室に戻らなくちゃいけない。


それでも泣き止もうとしない白坂頼を前に、俺の中で焦りが生まれる。



「えー、泣き止んで、くれない?」


「っっ、はいっ、今すぐ!グッ、はぁ、ちょっと待って、くだ、さいっ、」


「……。」


彼女は嗚咽を漏らしながら、何度も涙をハンカチで拭き続けている。俺に言われただけで、この必死さ。



「っっ、」


ゾクリと、背中に快感が走った。


「……ねぇ。」


「え?っっ、」


これだ。


「泣き止んで?」


「………。」


耳元でそう囁いた瞬間、嗚咽ごと息を呑込んだ頼を、至近距離で見つめた。

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