それを無言で見上げてくる黒蜜と、

「なにか用？」

笑顔で見上げてくる灰島。なんとなくこの女の笑顔が、私越しに頼に嘲笑を向けているようで気に入らない。

何か一言、言ってやるつもりはない。ムカつくけど負けているのは頼。しかも本人じゃない私がここで責めるのは違うから。

だからとりあえず、口角だけを上げた。

「フッ、」

「は？」

まぁ、いいじゃない？普通は普通同士やってろっての。なんとなく鬱陶しくなって。なにより黒蜜にイラついて。低い声を出した灰島を背にして頼に近寄った。

まだまだ呆けているらしい頼の両頬を掴んで。

「なんで、しょお？」

見上げてくる頼の涙目に笑いかけた。

目尻から、ポロリと頼の綺麗な涙が零れ落ちて、私はそれを誤魔化すために親指で拭う。

近々、カップルが成立しそうだから。

「失恋パーティー、開こうか。」

「っっ、決定、ですか？」

懇願の視線を向けてくる頼に、苦笑いを返した。

「残念ながら、そうかもね。」

「……。」

意外と恋愛なんてそんなもの。

狙っていた獲物が突然別の何かに取られてしまったり、自分のものにできても奪われることもある。

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