第37話

頼は、恋愛については極端に不器用で、残念で、バカ。それに無知だ。


だから灰島程度の女にでもこんなにもあっさり、奪われてしまう。



残念だけど、黒蜜の笑顔を見比べれば一目瞭然だから。



次行ってみよう、次。



頼の大きな目から涙が次々と零れ落ちて、教室が沸く。気付いた生徒たちが口々にひそひそと話し始め、黒蜜たちを視線で責める。



当の本人たちは、そうでもなく。


黒蜜は顔色一つ変えず、灰島と話していて、灰島はとても嬉しそうにそれに答えていた。



まぁでも、”そりゃ頼と付き合うだろ?”みたいな空気だったのはよくないとは思ったからね。私もそう思っていた内の1人だけど、まぁこれで、良かったのかもしれない。



「っっ、頼?」



突然、頼が勢いよく立ち上がって。


涙をぬぐって、強い目を上げた。


目を見開く私を見もせずに、頼の足はどしどし問題の2人の所へ。


まさか。取っ組み合いの修羅場とか?


……それはそれで面白そうだけど、白坂頼がそれはまずい。


ヒヤリとした私が慌てて頼を止めようと歩き出したところで、


頼は黒蜜の前に立って口を開いた。

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