第32話

「はーあぁ、疲れたー。」


「はぁ、」



笑ったり、スマホを弄ったり、寝てみたり。光里は青先生が帰るまで、私のベッドの上で過ごしていました。


呆れのため息を吐いた私は、椅子を回して光里に向き合います。



でも、こんな光里だからこそ、黒蜜君と会えない憂鬱な週末を乗り切れるというものです。



「でもさぁ。」


「なんでしょう?」


寝転がって、爪を見つめている光里。私よりよっぽど猫のようです。



「黒蜜、なんとなーく、なんとなーくだけどさ。」


「はぁ、」



両手を伸ばし、その上に顔を倒した光里は、唇を尖らせて考えるような仕草をしました。それはなんだか、とても真剣なもので。



「あいつ、一筋縄じゃいかない気がする。」


「そりゃ、片思いですから。」


「そうじゃなくて。」



首を傾げました。私の想いは、常に一方通行。黒蜜君は嫌ってはいないながらもきっと、気持ちを受け止めてはくれないでしょう。


そんな私の今の状況にではなく、光里は黒蜜君の何を感じているというんでしょう?



……なんだか私より、光里の方が黒蜜君を知っているようで。少しだけ、気に入りません。



「うわ、反抗的な目。」


すぐに表情を緩めた光里は、睨む私で遊ぶことに夢中になってしまったようで、もう黒蜜君のことについて語ることはありませんでした。



この時の光里の”予感”が当たるのは、まだまだ、先の話です。

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