第31話

困ったように笑えば、なぜか光里が盛大に吹き出して。



「アハハハッ!」



ガチャ、



「ん?光里ちゃん、どうしたんです?」


戻ってきた青先生に不思議がられてしまいました。



「えっと、私も、分かりません。」


なぜ笑われてしまったのか。私の方が聞きたいです。


口を尖らせる私を前に、やっと笑い終わった光里は、私の頭を乱暴に撫でて、ニヤリと口角を上げた。




「いいんじゃない?頼って完璧すぎるんだよね。とことん押して押して、押してみれば?それで逃げても、また押せばいい。どうせあいつは、逃げらんないから。」


「……黒蜜君は、鼠じゃありません。」



なんだか私が、か弱い鼠を追う猫みたいです。更に口を尖らせた私に、光里が再び吹き出しました。



「ぶふっ、マジでそうかも。あいつ鼠っぽい。」


「もう。」


笑い転げる光里がベッドにダイブして、それに背を向けて問題に向き合いました。


でも、先ほどまでは内容すら頭に入ってこなかったそれも、なぜか今はスラスラとシャーペンが進みます。



「……黒蜜君?」



だからか、そんな私の隣で険しい表情の青先生がそう呟いたことに、私は気がつけないでいました。

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