第18話

「だから俺言ったんだよね。」



顔を向けた流は、小さくなっていく2人の背中を一心に見つめている。



「白坂頼は普通のお嬢様よりも断然面白いから、まずはクラスメイトとして付き合ってみればいいって。一方的に色眼鏡で見るのは可哀想だよって、ね。」


「あれ、なんかデジャビュ。」


「は?」


目を丸くする流に深く頷いた。


「私も言ったの。”まずはクラスメイトから”って言うじゃない?」


「言わないけどね。」



さらりとそう言った流に、「そう?」と返して。2人同時に、お互いの親友の背中を見つめた。



「でもさ、」


「うん。面倒臭いよね。」


「そうそう。そろそろくっつけよクソが、みたいな?」


「うんうん。黒蜜も抵抗なんて無駄なのにね。」


「だよね。白坂頼に目を付けられたんだ。諦めないと。」


「だから、」


「うん。」



「「まずは周りから。」」



そう言った私たちは微笑み合った。



次の日。いや、その日の内にか。こういう噂が飛び交った。



遂に黒蜜が落ちた。




黒蜜の鉄壁の壁に今、小さな小さな、穴が空いた。



お嬢様の攻撃は、本人からとは限らない。



だけどそれは、本当に小さな穴に過ぎなくて。それを大きくするのに、かなりの労力がいることに、私たちは気付いていなかったんだ。

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