第16話

side 流



文人を初めて見た時、面白い奴だと思った。



いつもボーッとなにかを見つめていて、時折、寂しそうな表情をする。


あの頼の告白に絶対に頷かず、かといって驕っているわけでもない。


クラスが違うけど、気が付けば話しかけていた。



『お前だろ?黒蜜文人って。』



俺の声かけに文人は、不思議そうに振り返った。


『白坂頼を振りまくってるらしいじゃん。』


その言葉に顔を歪めて。苦しそうに息を吐いた。


そりゃあ気まずいよな。あんだけ何回も告白されたらさ。


そう思っていた俺に顔を上げた文人。その悲しそうな表情に息を呑んだ。


そんな表情を見せる文人が放っておけなかったのも、ある。


それから俺たちは、よく2人でいることが多くなった。


意外と文人といるのは居心地がいい。



そんな時、文人の悩みを聞いた。


贅沢な、悩みを。



『俺さ。』


『ん?』


運動場の端に、ベンチがいくつかある。それに座っていた俺たち。


文人は手に持ったヨーグルトジュースを見ながら呟いた。


コーラを飲んでいた俺に、文人は困ったように笑う。


『ダメなんだ。』


『は?』



遠くを見つめる文人はなんだか、寂しそうで。コーラを足元に置いて話を聞く体勢に変えた。

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