第14話
その表情に、全ての時間が静止した。
周りを歩いていた生徒たちは目をかっぴらいて凝視し、女子も男子も、頬を染めた。
そして、目の前でそれを食らった黒蜜は、というと……
「マジか。」
相変わらず、困ったように笑い返しているだけ。
黒蜜の壁は、最強の矛頼様でも突破は困難らしい。
「昨日の数Ⅰの宿題、やった?」
「え?ええ。」
ぎこちないながらも、歩き出した2人。それを呆然と見送っている私の隣に、並んだ影。
「やれやれ。」
「あ。」
今まで完全モブキャラだった……
「光里ちゃん、ちょっと酷くない?」
緑谷 流(みどりやながれ)
プリティーフェイスを歪めてイラついているのは間違いなく、私の彼氏様だった。
「なに、あんたの仕業?」
「うん、まぁね。こうなった方がみんなハッピーでしょ?一部の人は不幸のどん底だけど。」
ラーメンみたいな髪は、金髪のせいかおしゃれに見えてるけど。これ、天パーだからね。
本人もかなり気にしてストパーをかけてたけど、それは一週間で役目を終え続けた。
お金がもったいないから、この髪がおしゃれに見えるようにしたら、と提案した結果、こういう色になったわけだ。
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