第12話

黒蜜にはこういうところがある。



無視したり、嫌そうな顔はしない。気まずそうだけど、きちんと真摯に、頼を見る。



挨拶を返されただけで呆然と佇むバカを残して、黒蜜は帰って行った。



毎日、こんな感じ。



黒蜜も結構大変だよね。こんなんに好かれて。



振り返った頼は幸せそうな顔。


「はぁ、」


呆れのため息が出てしまう。



これでもし付き合えたら、卒倒するんじゃない?確実にそう思う。



とりあえず、このやり取りはもうめんどくさいから。



「頼、ちょっとおいで。」


「はい?」



首を傾げる我が親友に、アドバイスをすることにした。




---、



「頼。用意はいい?」


「え?ええ。でも、ちょっと、色々と……」



次の日。今更ながら再びド緊張状態の頼をジト目で見た。



「でもこれはちょっと、ハードルが高いのでは?」


「はぁ?」



校門前で黒蜜を待つ私たちは、なかなかの注目を集めてる。



ほんとに。黒蜜のことになればいつもイラつくくらい冷静な顔がすぐに赤くなるんだから。



アドバイスをした。


いつも教室で挨拶を交わすだけのただのクラスメイトな頼と黒蜜。

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