第3話
最近の私たちの会話の中心にはいつも、彼の存在があります。
「あ。」
光里の視線の先にいる人物を見た途端、私の視線は一気に太ももの上の自分の汗ばんだ手に集中してしまいます。
黒蜜 文人君(くろみつふみと)。私の大好きな人です。
「冴えない。今日も冴えない。」
「そんなこと、ないです。」
本当に、そんなことないんです。
黒蜜君は、一般受験組でこの春から一緒に通うことになった一人。
幼稚舎からの私たちとは違い、難関の受験を勝ち抜いて来たので、それだけでもすごいと思います。
少ない受験組なのに、それでももうお友達ができているのは、彼が社交的だからです。
「はぁ……素敵な、笑顔。」
「うーん。良さが分からない。」
失礼な光里は置いておいて今まさに、黒蜜君が笑っています。
満面の笑みではありません。なぜなら……
「もうガン見してあげなさんな。居心地悪そうだよ。」
「っっ、だって……」
私が涎を垂らして見ているのがまるわかりだからです。
でもっ、
「あのぎこちない笑顔がまたっ、」
「病院行ってきなさいね?」
とても、いいのです。
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