第53話

ーーー、




「これは?」


「いいんじゃないですか?」



「これ。」


「似合うと思います。」



「これもいいな。」


「……。」




あれから、2時間が経っていた。私が買いたい物は、数点。2階にあるそこに行ったら、同じ店で全て揃えることができたから良かった。



だから、私が買い物にかけた時間はお会計を合わせても20分ほど。思ったよりも早く済んでしまって、桐生先生まで付き合わせてしまって悪いなと思った。



それから、お兄さまのこの、質問攻めが繰り出されて。



ショップというショップを連れ回されている。




高級店の洋服から、まさかの食品まで。あらゆるものの中から厳選して最高の物をプレゼントしたいというお兄さまのこだわりは、凄まじかった。



今も、私が適当に返答しているにもかかわらず、一所懸命に時計コーナーを見ている。



微笑ましいな、と思っていたのは3店舗目くらいだろうか。



店をドンドン回る内、海渡さんを初めとする警備の人たちの目の温度が下がっていき、初めから嘲笑を向けていた桐生先生は今笑顔が恐い。




「お兄さま、もうそろそろ、」




疲れました。そう続けようとしていた時だった。



「あれ?貴女は狗神様の奥様では?」

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