第50話

「そりゃ、幸せだろ!」



自信満々の解答を憮然として吐き出すこの人が、自分のお兄さまな訳で。


私も正直、恥ずかしかったりする。



急遽沖田家を継ぐことになったお兄さまは、すぐに妻となる女性が必要だった。


友人のいない私にまで頼ってきたほど、”こだわり”の強いお兄さまの女性捜しは難航を極め、結局、急遽沖田家を継いだお祝いとして、玲に紹介されたらしい。



そしてお見合いの場に来た女性は、お兄さま曰く、稀に見る美女で。


お兄さまの好みの全てを網羅している、素晴らしい女性だった、と。



私は会ったことはないけれど、屋敷に来てまでお兄さまがあまりにも自慢するから、なんとなく、こんな感じの女性ではないかと予想も付いている。



「あああ、会いたいっ、もう会いたいっ、」



自分を抱きしめるお兄さまは、正直……



「鬱陶しいですね。」


「……。」



そうそれ。私が言いたいことを、スルリと言ってのけた桐生先生は流石だと思う。



「おい、結婚もしていない若造のくせに俺を非難するな。」



そう指摘するお兄さまだけど、確かお兄さまと桐生先生は同じ年のはず。



「失礼。同じ年の人間があまりにも年とかけ離れた行動をしているので、思わず本音が出ただけです。」


「「……。」」



お兄さまを見る桐生先生の嘲笑たっぷりの顔に、お兄さまの頬が膨れた気がした。

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