第49話

冬の到来がもう少しのこの日、少し買い足したいものがあってお兄さまに来て貰っていた。



「ありがとう、お兄さま。」



お兄さまにこうしてなんの引っかかりもなく笑顔を向けれるようになったのは、いつ頃からだろうか?



「いや、御兄様の為ならなんでもするから。」



こうして、お兄さまが玲のことを御兄様と呼び出してから、かもしれない。



「フフッ、相変わらずですね。」


「ああ。あの人は俺にとってまさに神だからな。」



法律上ではお兄さまが玲の兄なのに。お兄さまは玲を御兄様と呼んでとても敬っている。



「俺は幸せ者だ。」



そう言ってほう、とため息を吐いたお兄さまの彼方を見つめるその視線の先にはきっと、愛妻である彼女が笑っているんだろう。



「……そんなに、いいです?」



車に乗り込んで、まだ奥さんの世界に入り込んでいるお兄さまに、助手席の桐生先生が聞いた。



その質問に我に返ったお兄さまは、不愉快そうに眉を顰める。



「顔良し、頭良し、スタイル良し、床上手で、俺の一番のこだわり、足が綺麗で、性格も良い女が妻になったら?」


「……。」


お兄さまの質問に、桐生先生は心底蔑んだ目を向けている。

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