第47話

ただ私は、旭が歩むべき道なら、一緒に歩いていきたい。



私の大切な、たった一人の息子だから。



壊れるとしても、”どう壊れるか”それが大事。



「苦しむだけだぞ。」



玲がそう言って私を突き放そうとしても。



「いいんです。」


旭が泣き言を言わないのに、母親の私が”こう”では、ダメだから。



「貴方の場所でもあるんですから。」


「っっ、」



知っていたかった。私の大事な人たちの、やっていることを。



「見せることはできない。」


「……知っています。」



見ることはできない。私にはそれを受け止める強さはない。だからでしょう?だけど……



「教えよう。」



玲の言葉で、教えてほしい。玲の腕の中で、玲に包まれて、ゆっくりとそれを受け止めるから。



「はい。」



苦しそうな玲の顔に、笑顔を返した。


どこまでも私を想うこの世界の神は、その場所では泣くことができない。



暗い闇の中で笑い、悪意の上で鼻を鳴らす。



そんな自分を悔いはしないのは、それが彼自身だから。



それでも私は、そんな玲を愛し続ける。


心配なんてしないで。私は、狗神である京極玲ごと、愛しているのだから。


玲の背中に手を回し、そう心の中で呟いた。

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