第46話

目を開ければ、私はいつもの、ベッドの上にいた。



「……気分は?」



そして、私に笑顔のまま、玲がそう言う。それも、いつものこと。



「私、」


この先は、どうしても口にできない。私の発作の理由は吐き出されることはなく、玲の唇に阻止されてしまうから。



リップ音が響いて、玲は小さくため息を吐き出す。その甘い吐息が私の唇を撫で、私はそっと、瞼を閉じる。


玲の存在を感じ、玲の温もりを感じる。



そして。



「分かっている。」



何も言わなくても、玲は私を分かっている。


私が何に悩み、何に苦しんだのかさえ、玲には分かっていた。



これまでずっと、そうしてきた。私のことは全て、玲は分かっていてくれて。分かった、気でいた。



でもそれじゃ、だめ。



「聞いて、ください。」



私を至近距離で見つめる、金色の目をまっすぐに見た。



私を理解してほしい。情報でじゃなくて、私の言葉で。



「旭は何を、見ているんですか?」



私は、母親失格なのかもしれない。旭が歩むべき道は、あの子を壊すと分かっているのに。



あそこから逃がそうとは思っていない。



「私も、知りたい。」

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