第42話

「……潰した所で、ウジ虫は湧き出続ける。」



記者とは、そういう生き物だ。今あの雑誌を潰したとしても、別の同じ雑誌が出てくる。


大衆へと知らせる現実は真実でなくてもいい。人はそれを読んで面白可笑しく楽しみ、自分の恐怖心を紛らわすのだから。



「この雑誌はフリーペーパーにもかかわらず、創刊されて長い。需要があるのだろう。」


手に取り、それに金を出す者たちがいるからこそ、この雑誌は生きながらえている。



地平の持っている残骸を見てふと思った。



「”買い取って”我が情報を流すのもいいな。」


「……またそのようなことを。」



地平がこの話は終わりだとばかりにゴミ箱にそれを放ってしまう。


「おい、まだ読んでいるぞ。」


「……もうゴミでしょう?」



どうやら、雫の記事がかなり気に入らないらしい。地平は忌々しそうにゴミ箱を見つめ、俺に渡そうとはしない。



「雑誌に載っている雫の顔が違っている。問い合わせ先に抗議するのもアリだろう?」




顔をモザイクで隠してある女が雫ではないことは、雫を知っている人間ならばすぐに分かるはずだ。


虚偽の情報の多い雑誌とはいえ、これは気に入らない。勿論、この記事の内容もだ。

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