第39話
駅の端、公衆トイレの中、汚いクラブの一角。そんな人目に付かないような場所にタダで置いてあるもの。
この世界の神の”タブー”を扱っているのだから、まともな売り方では誰も買わないのだから、当然といえば当然だろう。
俺はそれを、小間使いのガキに金を渡して持ってこさせている。
「あいつの小遣いだ。カリカリするな。」
「……甘やかしてはいけませんよ。」
神である俺が従者に甘い顔をするのは言語道断だった。そんな決まりなど、神である俺は重々に承知している。
「……俺の自由だろう?」
「っっ、出すぎました。」
ゆっくりと、穏やかにそう言ったはずなのに。地平はビクリと肩を震わせた。
これまでは何とも思わなかったその程度のことにも、なんとなく気に入らない気分になる。
視線を下げれば、俺の手の中では”俺”が笑っていた。
神の顔は本来拝めるものではない。公的にも我々は姿を現さないことが常で、国民は我々の顔を知らず、その容姿の情報だけで我々を崇め続ける。
神聖な神は姿を軽はずみに現すものではないとされていたからだ。しかし俺は、それが気に入らなかった。
俺たちは外出することもある。そんな時、神であるはずの俺たちが、なぜ忍ばなければいけない?
そして俺のはっきりとした容姿が明確にされていないから、八神のような容姿が似た人間が崇められるきっかけになったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます