第39話

駅の端、公衆トイレの中、汚いクラブの一角。そんな人目に付かないような場所にタダで置いてあるもの。


この世界の神の”タブー”を扱っているのだから、まともな売り方では誰も買わないのだから、当然といえば当然だろう。



俺はそれを、小間使いのガキに金を渡して持ってこさせている。



「あいつの小遣いだ。カリカリするな。」


「……甘やかしてはいけませんよ。」



神である俺が従者に甘い顔をするのは言語道断だった。そんな決まりなど、神である俺は重々に承知している。



「……俺の自由だろう?」


「っっ、出すぎました。」



ゆっくりと、穏やかにそう言ったはずなのに。地平はビクリと肩を震わせた。



これまでは何とも思わなかったその程度のことにも、なんとなく気に入らない気分になる。



視線を下げれば、俺の手の中では”俺”が笑っていた。



神の顔は本来拝めるものではない。公的にも我々は姿を現さないことが常で、国民は我々の顔を知らず、その容姿の情報だけで我々を崇め続ける。


神聖な神は姿を軽はずみに現すものではないとされていたからだ。しかし俺は、それが気に入らなかった。



俺たちは外出することもある。そんな時、神であるはずの俺たちが、なぜ忍ばなければいけない?



そして俺のはっきりとした容姿が明確にされていないから、八神のような容姿が似た人間が崇められるきっかけになったんだ。

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