第38話

side 玲




「誰だ。」


「神代裕也(かみしろゆうや)、40歳、新聞記者です。」


「……ふん、大層な名前だな。」




画面に映るのは、俺を探る”犬”。いや、”ハイエナ”ともいうか。



「この間の奴よりは楽しめそうだが……、」



俺の言葉にニヤリと口角を上げた地平は、動画を静止させているそれに映っている一人の男を淀んだ目で見つめた。



この世界は、完璧じゃない。


俺たち神の在り様を疑問視する輩も必ずいる。



それは、全てに身を委ねることができない人間たちが生み出した感情。今も俺の大事な妻、雫を苦しめている厄介な代物。



【不安】だ。



その大きくなった感情は、ある者たちを地中から湧きあがらせる。



記者、パパラッチ、ハイエナ、ジャーナリスト。


様々なジャンルがあるにしてもこいつらは、同じ人種であることは間違いない。



人の情報で飯を食い、人を貶めて笑う。



まるでこいつらが俺たち神のようだ。



「この雑誌、読むのは好きなんだがな。」


「……またそのようなものを買っておられるんですか?」




地平が心底呆れた声を出した。俺が今握っているその本は、本屋に行っても手に入れることはできない物だ。

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