第30話

「妬いてくれるのはとても嬉しいです。」


「……。」



私の言い方が気になった玲。そんな玲が面白いと思った海渡さんと蒼羽さん。いつも表情を、感情を殺しているこの人たちが、私の前ではそうあってくれることに。


私は今、とても感謝しているから。



「さて、玲は仕事を抜け出してきていますよね?」


「……そういう訳じゃ、ない。」



厳密に言えば、そうなんだろう。だけどこの場に、地平さんがいないのが何よりの証拠。



玲が抜けた場所を守れるのはあの人だけ。


玲をいつも支えている彼だからこそ、玲は任せることができるんだと思う。



バツが悪そうな顔をしている玲に、微笑んだ。



「地平さんにあまり迷惑をかけてはだめですよ?」




---、



『子供扱いするな。』


そう言った玲は、憮然としながらも情報室の方へと足を踏み出して行った。



結局は、仕事を抜け出してきた多少の負い目を感じたということ?


今までの玲に限ってそれはなかったけれど、今の玲なら……



そうして、人と結びついてくれたらと思う。



人は嫌いでも、地平さんが、蒼羽さんが、海渡さんが、玲にとって大切な【人】であるはずなのだから。



「はぁ、」

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