第27話
「玲様、申し上げますが、「あっ、玲っ、お仕事忙しいですよね!?」」
「……、」
狗神の寝所でのことなど、この屋敷中の人間が把握しているというのに、京極雫はどうやらそれを弄られるのは苦手らしい。
よほど、今時の学生の方が飄々と流せるだろう。
可愛らしいこの人を困らせてしまうと分かってはいても、こうやって”弄ってしまう”。
それは俺自身が楽しいこともあるのだが……
「どういうことだ、桐生。」
「聞かなくてもいいです。」
京極玲の不愉快そうな声音にそう答えるこの人が、年相応の表情を見せていることに、安堵するからだった。
20歳で嫁いでから、この人は色々なことを強いられ、追い詰められてきた。
病気にもなり、苦しみ続けてきたと言って良い。
そんな中で、彼女は子を産んで。
重圧は更に厳しく重くなった。しかしこの人はそこに座り続け、微笑み続けている。
神の妻として、凜と立っている。
だから俺たちといる時くらいは、彼女らしい表情をしていてほしい。
「玲様、申し上げたいことが、「桐生先生?」」
目を見開いて「ヤメロ!」と訴えているこの人を、俺はいつまでも支えていたい。
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